かぶと虫か ぶ と 虫 おまえののっそりとした黒い背が動くたびに 私はくいいるように見つめた この虫の威容なほどの気丈夫な風采に 力強い動きにおまえの遅き歩みに 何かしら意味があるようだ この文明の中でおまえの動きは静かだ 蝉のように鳴くでなしかみきり虫のように噛むでなし 外見から見えぬそのおとなしさは現代の男達の あこがれのようなものをおまえは秘めている 大人たちでさえも持ちえない何かがある おまえは1匹の力強い侍のような気がする 虫たちの中で一番紳士のような気がする 臭いところで育ったおまえがなんと 素晴らしい身で世に現れるものよ おまえの黒き背が動くたびに 大きな触覚が動くたびに おまえは紳士だと思う |